記事一覧

倒産による消費者被害とクレジット会社の被害①

エステの契約は、チケットのまとめ売りが一般的に利用されていました。一回の施術が一万円だとして、それを一五回分受けるチケットが、一五万円ではなく一〇万円といった販売方法です。買う方にすれば割安で契約することができますし、売る方にすればまとまった金額が入って、さらにその顧客は継続的に通ってくれる可能性もあるので、魅力的な販売方法です。もっとも、来店してもしなくても前払いでもらってしまうのですから、後はどうでもいいということになりがちです。こういった販売方法をとると、エステサロンには前受金が貯まります。

前受金は、これから提供する施術に充当されるものですが、一度財布に入ったお金はどんなお金であろうと自分のものになるのと同じで、本来の趣旨から外れたことに使われてしまうことが多いのです。不動産や株の投資に使われたり、そもそも経営自体が乱脈だったりします。こうなるとエステサロンは倒産に至り、こういった事態に陥ると、未消化のチケットを持った顧客はそれ以上のサービスの提供を受けることができなくなります。クレジット契約をしていた場合は、当然のことながら払う気など起こりません。

逆に「金返せ」となります。法整備がなかった時代は、こういった言い分は通りませんでしたが、今は完全に通ります。そこでクレジット会社の対応としては、当該顧客が受けられるはずだったエステの施術を別のエステに振り替えたり、それに合意が得られない場合は返金する、などの対応をせざるを得ませんでした。顧客からすれば当然といえば当然のことなのですが、このルールが決まるまではすっきりした対応はなかなかできませんでした。

借用収縮による新たなマーケットの創出

特商法分野の代表的な取引である訪問販売は、過去、クレジットの成長に合わせて伸びてきました。それ以外の取引もクレジットと提携することによって売り上げを伸ばしました。加盟店与信という消費者信用にはあるまじき与信姿勢で審査した結果、売上はどんどん伸びますが、トラブルもどんどん発生する。しかし、クレジット会社のリスクはほとんどない、といった現象です。かなり乱暴な売り方をしてもクレジット会社が与信してくれるので、歯止めが利かなかった、ともいえます。その背景に、加盟店が売買解除を合意解除に持ち込んで、クレジット会社に返金する仕組みがありました。特定継続的役務提供もよくトラブルを起こしました。その代表格であるエステのトラブルは三つに分けられます。

一つは勧誘時のものです。キャッチセールスといわれている手法が多くとられました。街角で”お試し”をうたって勧誘し、エステの施術台に乗れば契約するまで帰さないという手法です。当然、セールスマンに歩合を払う必要がありますから、エステティシャンも契約を取るのに必死です。さらにその歩合分がありますから、安い契約では済みません。結構な金額のエステが、主に個品割賦を使って契約されていたのです。こういった場合、まさに契約させられたといっても過言ではありません。気分よく契約したわけではありませんから、一年分とか二年分の契約であっても行く気にならないのも仕方ありません。

その結果、解約したくなるのですが、それには応じません。それで消費者トラブルになったのです。泣き寝入りして払った人も多いと思いますが、各地の消費者センターにはこういったトラブルがたくさん持ち込まれる結果になりました。このような経緯があったので、エステが特商法の規制に入って、キャッチセールスが訪問販売の一形態として規制されるようになったのです。二つ目は、効能・効果やあるいは医療行為にかかる施術に関することです。「絶対に痩せます」と言われて契約したが話と違う、というのが典型的なトラブルです。また、脱毛等の場合は医療行為であるにもかかわらず、医者でもないエステティシャンが施術をして身体に危険が及んだ、といったケースもあります。

当然これらは論外であって、エスティックサロンの経営者の資質の問題です。では、よいエステサロンとはどういったところか、ということになりますが、中小でも地域に密着して長年契約しているところは、固定客がついています。そこに来る客はエステに何を求めているかというと、端的な言葉では「癒やし」だそうです。エステの施術を受けてお肌が椅麗になるとか、どこか細くなるとかいう効果はもちろん期待します。しかし、固定客がついて人気のあるエステティシャンは、結局は人に癒やしを与えられる人、つまり人間力の優れた人が多いようです。カウンセリングを受けて、何か安心した、落ち着いた気持ちになるのと同じです。効能・効果や擬似医療行為を行うようなエステサロンは、エステ本来の機能に期待できないので極端に走るようです。こういったエステサロンとクレジット会社がつき合うと、支払い停止の抗弁を受けることになります。

壊滅的な打撃を受けた特商法分野の加盟店

特定商取引に関する法律(特商法)は、一九七六年に割賦販売法から独立する形で制定された法律です。クーリングオフといえば特商法といったイメージがありますが、わが国の法律で最初に導入されたのは一九七二年の改正割賦販売法からです。特商法制定当時は、割賦販売法と特商法(当時は「訪問販売等に関する法律」といいました)の所管課は、経産省の消費経済課(現在はいくつかに分かれています)で同じでした。

一九七六年の特商法制定時に規制の対象となつていた取引は、①訪問販売、②通信販売、③連鎖販売、の三類型でした。連鎖販売は現代では、マルチ商法あるいはネットワークビジネスといわれているものです。無限連鎖講(ネズミ講)は、一九七八年に「無限連鎖講の防止に関する法律」が制定されて明確に禁止されています。特商法の連鎖販売取引は、規制の内容は厳しいですが、禁止されているわけではありません。

その後、特商法は何度も改正が繰り返されて、規制の対象とする取引も増えていきました。一九九六年に電話勧誘販売が追加になり、一九九九年改正では特定継続的役務提供が対象になりました。役務というのは、エステティックや英会話教室のようなサービス商品のことです。二〇〇一年には業務提供誘引販売取引が追加になって、規制対象の取引類型は制定当初の三から六類型へと増えています。さらに、いわゆる「押し買い」(訪問購入)といった取引が二〇一三年に追加になりました。

ショッピング枠現金化商法の問題点

ショッピング枠現金化商法で暗躍しているのが、海外決済代行業者といわれているクレジットカード包括加盟店です。現金化のようなグレーゾーンの悪質業者の温床になっています。この間題は、債務を抱えた人が不要な債務を抱えることになってさらに事態を悪化させる、つまり消費者被害を広げないといった視点で解決せざるを得ないようです。しかし繰り返しますが、正規のルートで借りられないからこのような逃げ道に迷い込むのであって、これは信用収縮の一面です。この事態に政府も手をこまねいているわけではありません。

政府広報をはじめ、消費者庁、金融庁はホームページで啓発活動を展開しています。関連の日本貸金業協会、日本クレジット協会も啓発活動を展開しています。しかし、その啓発活動は、①債務を増やし支払い困難になりかねない、②カード規約違反に問われクレジットカードが利用停止になる恐れがある、という二点に尽きます。確かにこれで思いとどまる消費者もいるかもしれませんが、抜本的な解決につながることはありません。それよりも意地悪な見方をすれば、日本貸金業協会が啓発するのは本来、業界で融資できたかもしれない顧客を本来のルートに戻すこと。

さらに、ショッピング枠現金化を使って債権内容が悪くなっては困る、といったことが本音としてあるかもしれません。日本クレジット協会についても、きちんと払ってくれるのなら利用してもいいけれど、本音は債権内容の悪化は避けたいといったところにあるのかもしれません。かなり意地悪な見方をしましたが、本気で根絶を図るには、消費者信用関連二元規制を一本化する以外にありません。

行政の対応の不合理

ショッピング枠現金化商法が適法かどうかというと、これは見事なまでにグレーです。お金を貸しているというのであれば、間違いなく出資法違反ですから刑法犯です。しかし彼らはお金を貸すわけではありません。割賦販売法に違反するところも思いつきません。出資法違反で業者が逮捕されたケースもありますが、後が続いていないところを見ると、おそらく不起訴になったものと思います。質の悪い業者の場合は、ショッピングだけさせてお金を振り込まないといったこともあるようですが、ここまでくれば詐欺です。利用した消費者側から見れば消費者被害ということになります。

しかし、こういった悪い業者でなぜクレジットカードが使えるのか、といった素朴な疑問が湧きます。国内でも海外でも構いません。自分でどこかの店に行ってブランド品か何かを買って、それを質店に持ち込むのも現金化ですが、これはカード会員の責任で行われている行為であって、それを仲介する者はいません。この場合、その代金をカード会社に払うつもりがなければ詐欺罪が成立しそうですが、その代金を払った場合は、せいぜい会員規約にある所有権の留保の権利を侵しただけです。カード会社も実害はありませんから、何も言わないと思います。

所有権留保というのは、割賦販売法第7条にある規定です。自動車は、登記制度があるので、この規定を有効に使うことができます。それ以外の商品では、例えばレストランで食事をして、それが所有権留保だといわれてもどうにもならないので、最近はあまり会員規約で見かけることはなくなりました。話を戻します。自分でどこかのお店で買い物をし、それを質店に持ち込む行為は、正規のクレジットカード加盟店であればカード会社にも加盟店にも何も問題はありません。ところがショッピング枠現金化の業者は、そういった正規の手続きでクレジットカードの加盟店になっているわけではありません。

ページ移動